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正偽の天秤
21世紀の後半になると仮想空間への理解が飛躍的に進み、異なる場所への瞬間移動のようなものが実現しだした。
視覚なり、聴覚なり、触覚なりを、センサーを通じて情報転送することで可能となったのだ。
それでも時空を超えた、つまり過去へのトラベルは不可能との認識は、そのままであった。
また、宇宙というか、この世については、
依然として超弦理論とか、なんとか論とかいう自らで作った仮説を成り立たせるための戦いに明け暮れていていた。
たとえば現実の宇宙空間は3次元であるが、量子力学の矛盾を説明するために次元が9次元まで必要となってしまい、
その9次元から3次元が生まれるシミュレーションが成功したというのだ。
それらの理論によると、9次元の内、現実の1・2・3次元以外は小さくて見えないというのだ。
単位も定義も無視するこの感覚自体が9次元らしい。
確かに見えない。
このように一般の人には理解できないのをいいことに、
説の矛盾を解明するためには「わからないところに蓋をする」的な、政治家のような科学者が幅を利かせていた。
IQ226はというと、自身の目的のためにせっせと地盤作りを始めていた。
どうも、自分と釣り合う人間というものが簡単には見つけられないことに気が付き、
未来にせっせと種を巻き始めたのである。
例えば21世紀後半のこの仮想空間の感覚である。
実際に動くものや概念を目の前に突きつけてやれば、加速的に進歩し、インフラが整うのである。
未来の当たり前を、過去に持ち込むと、とたんに魔女狩りに合うのだ。
今も昔も利権と理研は争いが絶えないのであった。
リスクが高すぎて得策ではないことに、IQ226自体も痛い目を味わい学習したのであった。
その未来に成功するであろう成果物とは、章のタイトルの通り、遺伝子である。
もちろん遺伝子にもいろいろある。
IQ226のつくろうとしているのは単なる遺伝子操作ではない。
バッハの遺伝子的なコピーを作りクローンを作っても、それはバッハではないのだ。
ただの別人が生まれてきたのと何ら変わりがない。
そうではなく、バッハを産み、バッハを育てるのである。
そのために必要なものを過不足なく提供するというのである。
もしもバッハが一人ではなく、実は影武者がいたのであれば影武者もつくり上げるのは当然のこと、
いくつかのエピソードに必要な出来事もお膳立てしてあげるというのである。
つまりこうである。
バッハという人物そのものの内、IQ226により提供された全てのものを、過不足無くこれから準備し、過去に送り届けようというのである。
成功することはわかっている。
ただし、どのような試練が待ち受けているかはともかく、今の自分にその能力がない以上、周りにそれ相応の人物がいない以上、
彼自身がやらなければいけないことを認識しているのである。
そして、現時点の課題は、果たして宇宙論者的に攻めるべきか、普通の物理学的に攻めるかである。
宇宙線か細菌かの選択であった。
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