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預言者降臨
「がってんだ」
ミカは改めてとどめを刺そうとしたが、おじいちゃんは再び腹話術のようにローマ字言葉でしゃべりだしました。
「チョット待ッテクダサイ、ガメス、、、アナタハE・ガメスノ曾孫サンデスネ」
「誰それ? 私は怪獣じゃないわよ。
おじいちゃんこいつどうする?」
「うぬ……」
「Fサン、オ気持チハワカリマスガチョットオマチイタダケマスカ?」
「待つも何も、お前がしゃべりだすとワシは喋れんじゃないか。
しょうがない、手短に喋れ」
てなわけで本来の体の持ち主、F・ヒデオと名乗る人物が語り出します。
「ジツハデスネ……」
全然手短ではなく、おまけにローマ字言葉の腹話術調だったので要約します。
F・ヒデオ氏はご存知世間を騒がせたおじいちゃんことS・Sさんがおこした事件で、殺し損ねたキヨシ氏と殺害されたその妻の息子である。
恨むべき殺人鬼でもあるのですが、元を正せば父キヨシが本人を騙して行なった手術が発端でもある。
裁判などの結果は単なるその時代のルールでしかない。
長期的には功罪は微妙であろう。
しかし、ともに時代の被害者だったとしても、長期間に渡り大きく実害を被ったのはS・Sであろう。
物心ついてからのヒデオ氏はこのような前向きな考えのもと、医師ではなく科学者として、医術の倫理観を含めてこのロボトミーについて調査を始めたのでした。
一般的にはマイナス面ばかり面手立てされてきたこの施術法にも期待面、管理面でのメリットだけではなく、純粋な医療的にも利点はありました。
そればかりか、さらに踏み込むと予想だにしなかった事実が浮かび上がってきたのです。
自らが表現する症状のうち、絵空事と言い切れない具体性を帯びたイメージを表現している患者が少なからずいたのです。
通常であれば、医師の、創造性の欠如したお固い頭脳でフィルタリングされ、「現実逃避」とかで処理されてしまう「そのイメージ」を根気よく汲み取って調査した結果、次から次へと情報が蓄積されていきました。
その結果をまとめると、
・健常者では約1%にも満たない、その症状が患者の約5%に見られた
・その症状とは、多重人格、予言、転生とか良くてエスパー、はてはオカルト扱いされるような症状の事である
・5%中の患者は突然植物状態に陥りやすい
・植物状態から復帰した患者は、時間の認識がちょうど植物状態の期間の中間時期であった。
この症状の人たちは、現代ではもう少しで統合失調症と判断され、投薬されそうな立場です。
これを「施術によりより統合失調症の症状が出た」との一般的な判断ではなく「特別な能力の持ち主になった」として調査を続けたのです。
そして、どうしても「絵空事」として片付けられない例が散見されてしていることを否定出来ないだけの情報を収集できたのです。
この事の意味することは、
「そいいうこと」です。
それは「超」だかなんだか知らないが「能力」です。
だとすると、
その施術は能力を助長したのか、抑制要素から解き放したのか?
精度の低かったであろう当時の施術法のその違いと効果はどうであったのだろう?
再現することは可能なのか?
他の施術法で同様の症状は出ているのか?
俄然面白くなってきた割に、既にその施術を受けた患者は新たには出てこないし、生存者も少ないし……
と行き詰まり感の出てきたところに現れてくれたのです。
新たな患者、それも頭にクリップ入り、それも当の私に乗り移ってです。
そしてついで有名な殺人鬼の血縁者。
「どうも血縁者には興味薄みたいね」
ミカはもう一度刺したくなってきた。
と、同時に、
(ヤバイついて行けない、それにこの展開だとワタシの存在意義はない、そろそろ消されそうだ)
と本能的に感じ、とっさに口走ってみた。
「ワタシも未来が見えるの」
「2022年に地球は滅びるの」
もちろんデマカセである。
似非預言者誕生の瞬間である。
後にこれを真に受けて記事にするものも現れた……
後に似非は外されることになるのだが……
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