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    使いっ走り
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使いっ走り

<IQ120より、 任務完了>

<了解、IQ120。
データはこちらで確認撮れたのでメディアは破棄してください。
完了したら引き上げお願いします。>

スクラップの山の中からMSDを取り出してから、リーダーでデータ転送完了までに数秒もかからなかった。

プリンタのプリンタ基板から切り取ったメモリを、そのまま接続できるように仕上げたネイルアートの上に乗せるだけで、脳内にテキストデータがイメージされるのだ。
そしてそれがそのままIQ226の脳内にもコピーされる。
もっとも傍受を警戒して出力は弱められているはずなので半径100M以内ほどの近距離にまで接近してでのことでだが。

IQ120こと堀之内はこのIQ値で呼ばれるのは我慢がならない口だ。

堀之内の研究室のスポンサー様は自身の名を秘すためにスタッフをIQで呼ぶようにしている。
IQに限らず偏差値では一般的な輩は誰が誰だかわからなくなってしまうのだがスポンサー様はそれで問題がないという。
有象無象の奴にユニーク識別子は必要ないというのだ。
実際同程度の偏差値ならだれでも同じ仕事ができるからである。

偏差値は100を標準偏差に85–115の間に約68%の人が収まり、70–130の間に約95%の人が収まる。
この95%の中に堀内は収まっているのである。
130は東大生のIQと言われている。面白いわけがない。
「どうせ俺は東北大」とひがんでしまう。

<しかし本当にIQ226なのかなあ?>
メディアを溶剤に浸しながら、物思いに伏せったのがいけなかったのか、気が付くとリサイクル業者のクレーン操作による70cmの鉄の球が堀之内の頭めがけて飛んでくるのが見えた。

 

<まさか>

 

ゴスという鈍い音とともに堀之内のそうした思いは一瞬の関光とともに消え失せた

 

 

だが実際には、脳に埋め込まれた送受信機のから発せられた数µのイメージ信号によって、堀之内のIQがIQ120からIQ30に減少しただけであった。

この堀之内を使い物にならなくした一連の装置は『ロボピン』という医療機器で堀之内本人が開発ユニットリーダーであった。

堀之内の開発したロボピンは統合失調性の患者に装着することで、劇的に本人と周りを幸せにする医療機器として認可を得ることが出来た。
承認時期は世間の注目を浴びたくなかったため、定番の「世間を騒がす事件(201x年のSMAX事件みたいな)」の片隅でこっそりと発表を済ませてある。

実際にはこの医療機器はロボトミーの関係者の積年を怨念、いや疑念を晴らす素晴らしい医療機器であった。
当時行われた手術が幼稚ではあったとしても、その目的や結果はとても正しい方向を向いていたことが証明されたのである。
また患者からの訴えの一つである「感動しなくなること」自体もひとつの効能としてとらえることで、ひとつの医療手段として晴れて陽の目をみることが出来たのである。
正しい解釈は、「感動的な風景に出会うと、良好な安静状態になる」である。

ロビコン本体は耳たぶにつけたイヤリング型センサー&発信機と額に張られた受信機&イメージ生成機からなる。
体の異常や、外部からのコントロールで発信機から送信された内容により、受信機はそれに対応した信号を脳内に送ることで、患者を沈静化させることが出来ます。
開発自体は単純なものである。
被験者が再現性をもって反応する画像(イメージ)を見つけそのときに流れる電気信号を解析し、コピーを作成する。
そしてそのコピーである信号を別の箇所から送り込み一定の反応を行わせるのである。
脳の記憶や反応時の想起ルートを逆手にとっただけの簡単な方法である。
例えば同じひまわりの絵で同じ患者を躁状態やうつ状態にすることもできる。
そしてパターンによっては死に至らすこともまでも可能となってしまったのである。

そして、そのひとつはたった今発信されたイメージである。
堀之内にしても「まさか此処で自分に適用されるとは」と思う暇なく逝ってしまったのだった。

このあと自身の手により次々に発表される予定だった「世紀の大発明」をひとつも見ることが出来なくなった。

つかんだつもりだったが、此処でお役目終了である。

これじゃあまるで使いっ走りだ。

<だからひっそりと発表だったのか!>

proxy

堀之内の怨念は無事発射されたようだった。

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